2000調査実習5月25日

調査実習2000第6回

~文献研究~

Time Table

時間 内容
13:10 「もう一つの近江文化」((社)反差別国際連帯解放研究所しが編)

・文献紹介
この本は岸衛(まもる)、桜井厚、中島勝住(まさずみ)、三浦耕吉郎の4人が序章から5章を
それぞれ分担して執筆している。内容は、滋賀県下のいくつかの被差別部落で部落特有の仕事
(オイサデ漁等)をしている人々の生活史の語りをまとめたものです。各章は次のとおり。

〈序 もうひとつの文化〉
この章には生活史調査の説明やその特質が書いてある。そのほかにこの生活史調査で
えられるだろう「もうひとつの文化」について書かれている。

〈一 太鼓づくり〉
この章は太鼓師の語りやインタビューアーの解説で構成されている。太鼓の事だけでなく
皮のなめしの事についても書かれている。最後の方に太鼓の皮の張り方の様子が書かれている。

〈二 行商〉
これも行商をしていた人にどんなものを売ったかとか楽しかった事は何かとかを聞いている。
売ったものの例として煙草入れや鏡台がある。

〈三 さいぼし〉
さいぼしとは簡単に言うと馬肉を焼いたものである。さいぼしを現在作ってる人のおばあちゃんが
考えたもので,さいぼしの歴史について書かれている。例えば,さいぼしを焼くと煙で町の人が
「今日やいてるなあ―」とわかるということが書かれている。

〈四 ツグミ釣り・ドジョウ捕り・ホタル売り〉
ツグミ釣りとは、魚釣りと同じ感じで竹のくいに糸と針をつけてミミズをつけてそれを地面にさす、
あとは魚釣りと同じ。ドジョウ捕りに関しては、捕り方や,ドジョウをどんな風にして売ったかが
書いてある。ホタル売りは女のこづかい稼ぎ程度の仕事で子供でもやっていた。

〈五 オイサデ漁〉
オイサデ漁とは、魚を追う人と網を持つ人にわかれて,追う人はは2組のわかれ、両側から
挟むようにして等間隔で並び,上流側に四手網を持った網持ちが待ち構える。遡上してきた小アユの
群れを「よう眼のきく人が先頭におって」下流から棹で追い,次の人がそれを受けて追い,更に次の人が
追うといった方式で、両側から挟むようにして上流側で待つ網に小アユを追い込むのである。
漁業協同組合をつくった話や夜にこっそりと漁業権をもっていない川に行って漁をした話
とかがある。

13:30 「生活記録の社会学」(ケン・プラマー)

社会科学における生活史研究の有用性について事細かに記された書。

第1章 主題を求めて
この章では、個人史がいかに社会学内で軽くあしらわれたかが延々と書かれている。

第2章 様々な生活記録について
生活史や日記、手紙など、社会科学において研究の材料として使える可能性のあるものを
列挙し、そのそれぞれについて、その有用性、無効性について述べている。
本書ではその中でも生活史がもっとも有用だとしている。

第3章 生活史方法の生成
ここでは、『欧米におけるポーランド農民』(Thomas and Znaniecki , 1918~)を
取り上げ、検討していく中で、ひいては生活史研究の歴史的変遷について論じている。

第4章 生活記録を活用する
ここでは、生活史研究の持つ役割について検討する中で、生活史が具体的にどのように
社会学に貢献できるかを述べている。
本書では、生活史は本質的、研究上、教育上、実践上において社会学に貢献できるという。

第5章 生活史調査を実施する
この章では、実際の生活史調査を
①準備  ②データ収集  ③データ整理  ④データ分析  ⑤データ発表
の5段階に分けて、そのそれぞれについて詳しい方法について述べている。
この5つは、順番が前後しても重複しても一向に差し支えない、としている。

第6章 生活を理論化する
生活史は、一般性に乏しく、理論化とは逆の方向性を取っているという批判がある。
しかし、生活史研究家にも理論化への関心は存在する。生活史において、理論は、
問題や材料を選択したり、対象者に対する質問の内容を制限したりと言った、研究の
方向づけに役立っている。

第7章 生活記録の個人的な問題点
この章では、調査の対象者に対する、個人的、倫理的問題点について述べられている。
具体的には、プライバシーの問題、調査者と対象者相互の生活干渉に関する問題、
調査結果の利己的利用の問題などが挙げられている。

第8章 終わりに
最後に、筆者のしてきた主張(生活史は方法論の隅っこに追いやられてきた)が
正しかったんだ、ともう一度念を押している。

14:05 「社会学の歴史的展開」(青井和夫 監修 , 宮島喬 編集 , 1986)

4章 生活史研究とその多様な展開

生活史研究に対する批判的評価
1技法上の進化が見られない
2社会学的一般化は不可能
3分析と解釈不足

4-1 生活史法の特質

本人(被調査者)の主観性、自発性を重視。技法上の進化ではなく多様性を浮かびあがらせるべき。

4-2 生活史法の社会学的可能性

社会学的信憑性を確保するための工夫
例  同業者による対象者の言動のチェック。
生活史資料の重ね合わせ。

4-3 生活史のコンテクストづけの試み

研究者が生活史を作品化する。その際研究者の解釈、分析枠組の設定目的、活用を明確にすべき。

14:40 <休憩>
15:15 研究テーマについての討議
17:00 <終了>

~実地調査~

時間 内容
15:15 テーマ決めに関する先週の経過報告
15:25 桜井先生によるこれからのプロセスの説明(鵜呑みにしてはいけない)

  • サンプリング(二度と会えない人ではまずい)
  • インタビュー(カセットテープ持参)
  • トランスクリプト(テープおこし) 肉体労働
  • データが出てから合宿にて編集
  • 分析、解釈(自分のデータ+補足として他の人のデータを使う)
  • 二回の報告会を実施する予定
○これからの調査の流れ

テーマ決定 → 各グループごとのテーマ決定 → 対象者選択 → インタビュー → トランスクリプト
→ 合宿その1 → 個人でテーマ決定 →執筆、合宿その2 → 編集、分析版完成へ

○「伝統」について(桜井教授の見解)

・地域を限定するか否か?   ・様々な職人を比較するのは大変かもしれない

○「団塊の世代」について(桜井教授の見解)

・「団塊の世代」とは1947年から1949年生まれの人を指す
・幼、青年期 高度成長期 成人期 低成長
・スタイルは新しいが、中身は古いと呼ばれる
・中年男性に絞り込むのか?
・職業だけという枠を広げた方が良いのでは?
・都市近郊のサラリーマンが良いのでは?

16:10 説明に対する質問

テーマ決めの話し合い

伝統を継ぐ人、作る人

長所
このテーマなら千葉でできる
比較しにくい事に特に意味は無いのでは?
サンプリングしやすい
こっちも中年が多いのでは?
短所
職人は怖い

団塊の世代

長所
みなで協力してやれるのでは?
データの共用などにおいて、多角的視点
まとめあげの時点で有利
短所
比較しないと何かが見えてこない
リストラ世代であるから今を語りたくない場合もありうる
おじさんは怖い

17:00頃 「団塊の世代」に決定!!

Field Notes

  • 今週のレジュメは、かなり今までのと違って、ライフヒストリーによる研究と言うよりは、方法論の話だったので、やっと何だか全体が見えてきたように思う。先にこういうのをやってくれた方がよかったのでは・・・。
  • 何だか今週はとても眠かった。本当に眠かった。今までの話し合いで色々意見が変わっちゃって、本当にいい加減だなぁ・・・私は。 がんばっていこーー。
  • 今日、テーマが決まった。結局「団塊の世代」だ。「伝統」より面白そうな気はするのだが、これで本当に調査ができるの だろうか。自分の親の世代って、知っているようで知らないように思う。ただ、私たちのような(自分の息子の世代)学生が聞きに行って、そこまで深い話をし てくれるのかどうかが不安だ。何より、人間関係、信頼感など生まれるのだろうか。おじさんに話を聞くのは・・・イヤかも。
  • 今日はついについにテーマが決定した。みんなの忍耐力と執着力と集中力に万歳だ。もっとスムーズに決まらなかったの か、と思う反面、みんな、真剣にテーマについて考えていたのがすごいな、と思う。私は先週途中で帰ったので、先週の議論の(ウワサの)すごさは知らない。 が、9時までよくもまあ一つ一つ候補をつぶしていったもんだ。私も見習いたい。ともあれ、自分のやりたいテーマに決まってよかった。そもそも私は学園闘争 や全共闘に興味があったのだ。

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