2000調査実習5月11日

調査実習2000第4回

~文献研究~

Time Table

時間 内容
13:05 ホームページ作成についての会議
13:45 「老人福祉とライフヒストリー」(中野 卓, 小平 朱美, 1981)

内容 : 60歳を越えた大学教授と20代の学部卒業生の老人福祉の事例研究に関する共著
調査方法 : ライフヒストリー法
調査対象者 : 65歳以上(1914以前生まれ)、独居老人、老人ホームに住む老人
対象地域 : 東京都新宿区、栃木県任生町、東京都江戸川区、栃木県佐野市
聴取内容 : ライフヒストリーと現在の生活について
ライフヒストリー   質問表を持たずにフリートーキング
現在の生活について
1.収入源
2.健康状態
3.対人関係
4.日常生活
5.家居の所属
6.住居の場所についての意見
7.将来について思うこと
8.不満に思うこと
面接時間:平均として1時間半から2時間
調査目的:老人福祉を社会学的に研究しようとする若い世代がしらない過去の時代状況や対象者
のパーソナリテイとその形成課程や生育歴や生活歴を知ること
:現在という同一平面上のことに類型かを施すのと同じようにライフヒストリーによっ
て得られた横断面におけるパソナリテイや事象のとらえかた.影響の受け方と現状と
の因果連関の類型化を試みる
:個人のパソナリテイ―とどのように絡み合い、どのような人生を送ってきたかそのな
かにその時代を生きてきたことの特殊性と同時に気質に負うところの普遍性も見だし
うる。そのことが現在、青年期、壮年期にある人々の未来における老後の様相を予測
可能なものとし、また、来るべき老人問題の予防、対策も可能にするため
調査結果:
小平:財政上困難なことでありながらも養護老人ホームを全国各地に満遍なく建設す
ることがが必要とされる。収容所ではなく学生寮のように主体的活動の基盤と
なることが望まれる。
中野:老人と年下の者とともに生きることによって老人福祉を実現する。

14:25 「サンチェスの子供たち」(オスカー・ルイス, 1969)

この本は、メキシコシティのある貧しい一家についてのライフヒストリ-である。父親とその4人の
子どもたちにインタビュ-を行なっている。父親には、その生い立ちと家族観についてを聞き、
それがプロロ-グとエピロ-グに書かれている。4人のこどもたちについては、うまれてから
今までのことを相当に膨大なインタビュ-量で語らせている。4人それぞれが、父親、母親、近所、
兄弟などのことを、それぞれの視点で語っており、読み比べると興味ぶかい。

14:55 <休憩>
15:05 「ライフイベント 語れる留学」(京都大学留学生研究会(編), 1999)

〈本書の構成と目的〉
本書は急増する留学生の生活実態および意識のあり方を社会学的に究明することを目指して、
留学生センターの教員が社会学や教育社会学の大学院生に呼びかけて、1996年の秋に
組織された京都大学留学生研究会が行った調査の成果である。その内容のは6本の論文と
ひとつの補論からなっている。6本の論文は、それぞれ一人の留学生を対象とし彼らの語られた
ライフヒストリーに基づいて構成されている。補論の論文は、当事者としての体験と
参与観察に基づいて、吉田寮における留学生受け容れ体験から吉田寮における留学生の日常生活と
そこに映し出される京都大学の姿を描いている。

〈序〉
〈1・留学生を「理解」するとは〉
1983年の中曽根元首相による「留学生10万人計画」によって留学生が5万人以上に
達していたにもかかわらず、日本の大学や社会における留学生への理解は十分とは言えないだろう。
留学生についての認識は、各人の体験によるイメージや一般的な留学生へのステレオタイプを
なかなか脱しきれないのが現状である。

〈2・生研究の展開―留学生はいかに研究されてきたのか〉
留学生を正確に認識し理解するには彼らの生活の表面な実態だけではなく、彼らの生活実態の
中にある仕組みを読み解く必要がある。たとえ留学生の偏見、差別の仕組み、それらと
オリエンタリズムやナショナリズムの関連など。

〈3・本調査の視点と方法〉
留学生を社会問題としてとらえないこと。留学は人生の重要なライフイベント。
留学生の人生をまるごと対象とする方法としてライフヒストリー法を調査する。

〈4・調査の概要と報告書の構成〉
調査の概要は留学生が生きる世界に関する重要な諸点を調査課題としていた。調査方法は
メンバーの6人がそれぞれ属性の重複しない留学生を探し、留学生へのライフヒストリー法による
インタビュー調査を行った。

《第1章 出身をめぐる視線と自己定義 あるタイ人留学生へのインタビューから》
タイ出身で現在京都大学大学院人間環境研究課に在学中のAさんのは100%のタイ人であり、
地方出身で家庭状況はかなり裕福なエリートの出身で、両親も高い教育を受けていて、母親は大学の
先生で、父親は公務員である。出身階層は高い環境で育ったAさんのこれまでのライフヒストリーを、
国籍、民族、地域、親の職業、京大生といったものに対して彼女が受けてきた視線とそれによって
構成されてきたセルフアイデンティティという点に重点を当てて紹介することである。

《第2章 イスラム教徒として科学者として あるインドネシア人留学生》
Bさんは1964年スマトラ島西部のベンクル(bengkulu)で8人兄弟の長男として生まれた。
父親は判事で母親は専業主婦である。実家の生活レベルについてミドルレベルと答えたが、
留学生について別の調査では母国で理工系の大学院や大学の卒業した人は生活水準は高めである。
第2章の内容と焦点は主にBさんの宗教信仰と学校の教育体系、そして日本にきてから
異なった信仰、文化、生活の違いそして日本人の持つイスラムイメージなどについて取り上げた。

《第3章 語りから会話へ あるアメリカ人留学生のライフヒストリーと身体》
Jさんはアメリカ出身の30代前半の男性である。空手三段の肉体派である。今は社会学系の
大学院生で大正期の女性の恋愛間、結婚観を中心に研究している。この章では前半は留学経験と
留学意識の変容について語った。後半では身体とアイデンティティ(自己の身体にこだわる人と
身体を研究する友人の会話)のようなもので構成されていた。

《第4章 日常の記述・異文化の理解 あるケニア人留学生の生活》
Mさんは30歳で、出身はケニア共和国である。宗教的にはプロテスタントの家庭で男5人、女4人の
九人兄弟の末っ子としてうまれた。父親は銀行員だった。現在京都大学の工学部で博士論文を
書いている。アフリカの出身であって、黒人である彼は、この章ではMさんを通じて見える
社会問題つまり露骨な偏見や差別問題を焦点として、取り上げた。

《第5章 越境と理解 韓国人留学生と在日朝鮮人》
Aさん1998年は韓国からの留学生である。この章ではAさんのプロフィールから日本の生活に
ついて、話を展開していく。そして、Aさんの信仰と通った教会京都南部教会(その教会に集まる
信者はほどんど在日朝鮮人で、プロテスタント系の教会である。)について語る。後半の部分は
調査者がその教会に行って、感じた韓国人と在日朝鮮人のアイデンティティのようなものについて、語る。

《第6章 チャイニーズとして生きる ある中国人留学生の選択》
Sさんは中国の内モンゴル自治区から18歳の女性で、来日したのは6年の前だった。日本語はとても
堪能な人である。この章の内容は主に、彼女の日本語の習得過程を紹介していき、そして彼女は自己の
留学体験を全面的に肯定していること(実際彼女が他の中国人留学生の意識とは大きく違った。)
また彼女は日本で強く日本に生き残る選択、意識(彼女はこの時点では既に就職が内定されて
いたという)についてのあらすじを語る。

《補論 築90年の国際交流 「国籍性別不問」京都大学吉田寮の試み》
この補論では京都大学における吉田寮という場所を取り、留学生との交流の実態と現状、そして
吉田寮が学生に対しての受け入れ姿勢、また吉田寮の自由な雰囲気、学生に任せる自治の方針などを
紹介した。その他、それ以外の国立大学の寮も取り挙げた。

15:40 研究テーマについての討議
17:05 <終了>

~実地調査~

時間 内容
15:40 各班のKJ法での分類結果を発表
(前回作業分)
16:20 各班で、分類した大まかなテーマのなかでやりたいこと上位4つをしぼりこむ。

~結果~

1班 2班 3班 4班
1位 職業 ファン 少数派 職業
2位 地域性 中年老人 自由系 世代
3位 メディア 若者 プロ 依存
4位 家族 労働関係 地方文化 千葉
17:05 授業終了
授業終了後 スタッフと学生数名で居残りの話し合い。
桜井先生の提案として、①伝統工芸、芸能②中年の男性が挙がる。
また、各班から出されたテーマを検討し、ファンはお金がかかるなどの問題点があるので
ボツになる。
最終的に、職業を中心としたテーマで来週提案することに決定。

Field Notes

  • 社会学ホームページに関する話し合いがとても白熱したのには驚いた。私は「まあホームページがあってもいいかな」くらいの気持ちだったが、「メ リットはあるのか?」という質問を聞き、改めてその意味を考えてしまった。確かにセキュリティ面などで危険が伴うのは事実だし、外部に公開し、意見を募る というのならある程度しっかりとしたページにしなくてはならないだろう。中途半端にやるのならむしろやらない方がいいのかもしれない。いずれにしても作る ことになったからには外部からの反応も得たいし、思い出となる(?)ホームページにしたいと思う。
  • テーマ絞りは本当に大変だった。「対象者が見つかるか・会えるか?(←政治家や女子プロはつらい)」「ライフヒストリー法をとる(=その人の人生を聞いてもつまらなければ意味がない ex:コギャル・厚底ブーツ)」事を考えるとある程度絞られてきてしまう気はするが。
  • K君の発表について。(「老人福祉と~」)単純に受け止めると、年の一人暮らしと地方では明らかに老人の満足度に差が あることに環境の重要性を感じた。老人ホームの実態(6畳に4人など)は、老人ホームがもう少し改善しなければならないだろう。とてもホームとは言えない のではないだろうか。
  • Tさんの発表について。(「サンチェスの~」)この人類学者の貧しい人々に対する見方「急激な発展の中で~支えてい る」という持ち上げた表現に批判を感じた。貧しさの文化を排除することなく残すことも視野に入れるべきだとすら思える。「貧しい」というのも人それぞれ見 方があり、日本人であれ貧しいと思う部分だってあるはずで、貧しさについても考えてみたい。
  • レジュメ発表について。久しぶりに(と言うかこの授業ではじめてかも?)眠くなった。
  • テーマ決めについて。3班内部の話し合いでは、相手の意見を打ち負かすと言うよりは、全部まとめようという感じだった。個人的に、やる気の持続しそうな(=興味のある)テーマになることを望む!!

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