2000調査実習4月27日

調査実習2000第3回

~文献研究~

Time Table

時間 内容
13:05 ・「物語としての「家」」(橋本 満 , 1994) ←前回分にまとめて掲載
13:35 「アンダーグラウンド」(村上 春樹 , 1998)

作家村上春樹が彼自身の社会的立場に制約されながらも、薄い膜で覆われてしまい、
万人に対して覆い隠されてしまっている真実そのものに迫ろうと試みた軌跡が詰まっている。
地下鉄サリン事件。1995年3月20日の朝、東京の地下でほんとうに何が起こったのか。
事件を通じて人々は何を見て、何を体験して、何を感じたのか。62人の関係者にインタビューを重ね、
リアリティを伴って事件の真相を描き出している。
ていねいに準備されたインタビュー、作家として洗練されてきたきわめて適切な表現、
そして何より問題関心に対する一人のひととしての筆者の真摯な態度が、読む人をマスコミに
与えられたある程度無害化された情報から解き放ち、ときには揺さぶってしまう可能性をも
すべて包み込んで、生身の彼、彼女自身を事件の現場の奥へと導いていく。
事件は確かに起こった。そして、その影響を受けながら、現在もすぐそばで日々生活している人たちが
たしかにここにいることをあらためて思い起こされる。

14:10 「精霊と結婚した男」(ヴィンセント・クラパンザーノ, 大塚和夫・渡部重行訳 , 1991)

トゥハーミという名のアラブ系モロッコ人への度重なるインタビューの成果に基づき、
彼のパーソナル・ヒストリーを記録したもの。序章、第1章から第5章、終章からなり、序章は
トゥハーミの紹介、及び個人史研究とそれが割り当てられるジャンルに関す問題提起,第1,第
3,第5章は,トゥハーミの語ったことの記録,第二,第四章は著者の思索的な部分,終章はおま
けのような部分,という構成になっている。
トゥハーミは文盲のかわら職人で,気まぐれで執念深い女の魔物であるアイシャ・カンディ
ーシャという精霊と結婚していて,彼は彼女に性愛生活を支配されていた.モロッコにはこの
ような男性は他にもいて、彼らはことごとく風変わりな生活をしていた。孤独なくらしであ
ったり,性的不能,肉体的不適格などであったりして,彼らはことごとく何らかの理由で結婚で
きない男たちであった。

14:50 <休憩>
15:05 研究テーマについての討議
17:00 <終了>

~実地調査~

時間 内容
15:05 先週の作業(ブレーンストーミング)の続き

先週のKJ法による作業の続きを行なった。
具体的な作業の内容は、次の通り。

①前回仮に分類したものを確定させる。
②それに基づいて、各テーマ候補の書かれた紙を大きな模造紙に貼っていく。
③それぞれのグループに名前をつける。

なるべく、関連するグループは近くに置いた。
その結果、1班は兄弟や依存などといったグループに、2班は国際や家族などといったグループに、
3班は恋愛や教育などといったグループに、4班は学校や普通の人などといったグループに分けた。

17:30 <終了

Field Notes

  • 今回の僕の調子は最悪だった。睡魔にやや負け気味で、発表者に不快な思いをさせただろう。すいません。しかし、前半こそはそんな状態だったが、後 半のモチベーションは高かった。班のみんなも、時間がなくなっていくにつれて、てきぱきと作業し、何とか一段落するに至った。このフィールドノートも回を 重ねるごとに自分の字が汚くなっているような気がする。仕方がないだろう。次週はGWで休みで再来週から再開だ。気を引き締めたい。
  • 司会というのは、やっぱり難しい。熱中しているところへ割り込んでいって止めるのも苦手だし、感想を言うのが難しくて皆が黙ってしまうところは自分でも何も言えなくなってしまうから。
  • ライフヒストリー法というのは、結論が見えてこないので、じれったくて仕方がない。やっぱり体系だった学問の肉付けにしかならないのではないかと思った。
  • グルーピングの作業は、色々な考え方が出てきたり、偏見が出てきたりで、とても楽しかった。
  • 今回は「ライフヒストリー法とは何か?」というのがとても問題となった。確かに主観的な個人の語りが元となるライフヒ ストリーは、事実関係の面から言うと誤りが多い、と言えるかもしれない。今回の文献でも、真実と異なる点が数多く指摘されていた。(特に「精霊と結婚した 男」では・・・。)だが、桜井先生もおっしゃったように「事実」とは一体何か?と考えていくと、当事者にとっては事実=真実ではないのではないか、とすら 思えてくる。実際、村上春樹も「何が正しくて何が正しくないのか・・・はもはや重要ではない」と書いているようだ。何を求めればいいのか、社会学をやる上 で難しい問題だと思う。数学のように決まった答えなど存在しないのだから。
  • KJ法は何だか収拾がつかなくなってしまった。これをどう1つのテーマにまとめていくのか・・・大変!!

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